スプラウト・キュレーションはこの度、大塚聡による個展「ステレオ・ランドスケープ」を開催いたします。大塚はこれまで写真や映像を通し、光を扱う作品を制作してきました。本展では光学的な興味から、より実在論的なフェーズへと深化した新作を発表します。
作家ステートメント
鏡の膜にエッチングをすることで鏡の物質を取り除くことは、同時に鏡像(イメージ)も取り除かれています。その消失点に光を充填します。鏡に映り込む外部の光と内部から現れる光、これらの重ね合わせは空間の光の変化と付加された光の変奏によって、同質異像としての光の界面を生じさせます。鏡と光を素材とする作品では、空間の光の振る舞いが反映する鏡面にもう一つの光の相を重ねることで、外部空間と内部空間との接合を内在化させた構造を一つの景として顕在化することを試みてきました。
今回の個展では、このような構造を持つ作品を2点一組として並べたインスタレーションをメインに構成します。それぞれに投影される映像には撮影時の時間差があるため、鏡面上に現れる光の表情に差異が生まれます。同期することのない二つの光の位相が不確定な一つの空間の中で統合される視覚体験。それはステレオとしての視覚体験とも言えるのではないでしょうか。二枚の鏡、内部と外部、裏と表、二つの光の相、差異と統合、これら二極間にステレオ構造の相乗効果によって新たな奥行きが生まれること、経験によって拡張される新たな景の顕在化を試みます。
大塚聡| Satoshi OTSUKA
1970年福島県生まれ。1994年多摩美術大学美術学部卒業。写真、映像、インスタレーションなどのメディアを用いた作品を制作。主な個展として「Untitled–Seeing Time」2017(ample gallery 神谷町/東京)、「代官山フォトフェア」2016(hiromiyoshii roppongi ブース/東京)、「残光 – Afterglow 」2016(Maki Fine Arts /東京)、「Fragment」(旧小林秀雄邸 /鎌倉)2009。また「引込線/放射線」2019(所沢)、「媒質としてのアンビエント」2019(スプラウト・キュレーション)、瀬戸内国際芸術祭、(福武ハウス/瀬戸内)2010、「The ESSENTIAL」(千葉市美術館)2002他グループ展多数。