尾関諒|海、メガネなど|Ryo OZEKI | Sea, Glasses… May 28—Jun. 21, 2020 レビュー をダウンロード

尾関諒は1986年生まれ。2005−09年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻。2011年同大学院研究科修了後、2013年までドイツカールスルーエ造形美術大学に在籍、その後ベルリンを拠点に活動していましたが、現在は東京近郊で制作を行っています。

 

尾関諒の絵画を前に、印象派の後裔ではないかと直感する人も多いでしょう。しかし、まず一度画面に近づいて、スマホやタブレットなどで作品のどこかの部分を撮影しピンチで拡大すると、その細部に局所的な絵画空間が潜んでいることに気がつくはずです。乾いた筆致は美しく微細な光の粒子となり、それらが重なったり共鳴し合ったり、相互に絶妙な関係性を創り出しています。そして再び引いてみたとき、その豊かなトーンが画面全体に行き渡ることで、作品が構成されていることがわかります。印象派が対象そのものではなく「対象を包み込む何か」を探求した芸術運動であったとすれば、対象を徹底的に排除し、かつ抽象化へも向かわず、記憶の中の身近なモティーフを「包み込む何か」つまりアンビエントの前景化こそが尾関の絵画に内在するテーマだと言えるでしょう。キャンバスに油彩というクラシカルな枠組みにあえて留まることで、むしろその今日性が強調されるのです。