ITTAH YODA | body alights – a fragmented memory

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アーティスト:イッタ ヨダ|ITTAH YODA
展覧会タイトル:降下する身体 記憶の断片
body alights – a fragmented memory

2018年12月15日(土)→2019年1月20日(日)
冬期休業:12/30〜1/8

 Virgille Ittah (1981年パリ生まれ)とKai Yoda (1982年東京生まれ)は、ロンドンのRCA(Royal College of Art)で、それぞれ彫刻と写真を学び、2015年頃からアーティスト・デュオIttah Yodaとして、ベルリン、ロンドンを中心に活動中です。メッシュやシリコン、3Dプリンタなどを使う先進性と、普遍的でクラシカルな技法が共存し、そのスタイルがヨーロッパ各地のグループ展で注目されています。日本でも、スプラウト・キュレーションが企画した渋谷ヒカリエでのグループ展「ポスト・リビングルーム」(2017年)に参加。近未来の夢を見ているかのような、浮遊感に満ちた世界観に、多くの来場者が魅了されました。
 日本では初個展となる本展では、より進化した彫刻作品をはじめ、VRデバイスなども用いた、新しい視覚体験をもたらす総合的なインスタレーションを発表します。

 

ITTAH YODA
body alights – a fragmented memory

15.12.2018(sat)→20.01.2019(sun)
Opening reception 15.12 (sat) 6-8pm

Sprout Curation is delighted to present Ittah Yoda's first 
solo exhibition in Japan.

Ittah Yoda is interested to present a fertile ground where the viewer can see and interpret their own idea but also be an active participant contributing to the work itself.

The organic shapes that they create represents a new form of life that visually makes no reference to any precedent unique image or form but are more of a composition, assemblage of various ideas, and cultural references that are sometimes contradictory to each other. 

Ittah Yoda exhibited in a group show "Post - Living Room" curated by Sprout Curation at Shibuya Hikarie Cube in 2017. The visitors enjoyed the feeling of floating and dream-like atmosphere that signals a world in the near future. Ittah Yoda will be showing newly developed sculptures and VR pieces that are linked to each other as an installation work .

Ittah Yoda is an artist duo by Virgile Ittah (b.1981 Paris), and Kai Yoda (b.1982 Tokyo) working together exclusively since July 2015 between Berlin, London, and Provence. Ittah Yoda creates new entities connected together in a multiple, nonhierarchical structure able to communicate and co-exist in a divergent way. Through the play of scale and spatial dimension, bridging the virtual and physical reality, the division and boundaries between the traditional subject-object relation is questioned where new perception enhancing multiple, hidden realities are initiated to the viewer. Developing their work towards the tangible but also sacred, they explore new rituals of a post-humanity existing virtually through constant communication, where individuality and uniqueness is put in question. New connections and meanings are created through an assemblage of multiple origins, with an interest in the idea that our identities can be based not on our past or present but rather what we can become. 

Recent exhibitions include: COLLAPSE ON HOLD, Mocvara Gallery, (Zagreb)(2019),, Augmented Sunrise Beneath The Skin, Gr_und (Berlin), Dead Air, Gossamer Fog, Raum Station, Gr_und (London, Zurich, London), SUV, Spinnerei Leipzig (Leipzig), European, Foreign & Domestic, Slate Projects, Averard Hotel (London)(all 2018),, Risky Attachments, FOOTHOLD (Polignano a Mare) Post - Living Room, Shibuya Hikarie Cube, Sprout Curation, (Tokyo) SQUISHY: eels swim in snakey, Julius (Berlin) Lightness, White Rainbow Gallery (London)(all 2017),, I think mango you say salmon, Annka Kultys Gallery (London), What is a bird? We simply don’t know, Nicodim Gallery (Bucharest)(all 2016)

artist's website
http://www.ittahyoda.com

Sprout Curation
http://sprout-curation.com

3F, 5-1, Goken-cho, Shinjuku, Tokyo
https://goo.gl/maps/uXpJFoBwJrJ2

Open hours
Wed - Sat 13:00 - 19:00
Sun 13:00 - 17:00
Closed on public holidays

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イッタ ヨダの内的な彫刻――仮想現実、シェア、不安

飯岡 陸

 

 フランス生まれのヴァージル・イッタと日本生まれのカイ・ヨダからなるベルリン在住のアーティストデュオ、イッタ ヨダ。ふたりはそれぞれ異なる文化圏のハーフであるという出自を持ち、それゆえに未だに口語のコミュニケーションにおいてもたびたび誤解が生じると話す。彼らの協働は、コンピュータ上でそれぞれが作ったふたつの彫刻を融合させ、ひとつのデジタル彫刻を生み出したときから本格的にスタートしたそうだ。

 

 展覧会「降下する身体 記憶の断片」に向けて彼らが制作したVR(仮想現実)には、ふたつのステージがある。ひとつはパール色の空が広がる空間として、もうひとつは体内を映す医療用の映像素材のように仕立てられている。その間を行き来することはできず、空間的な関係を持たない。そこには有機的な壁や、器官のようなものが浮かぶ。鑑賞者はその中をゆっくりと浮遊し、手元のコントローラーを使うことでオブジェクトに触れることができる。遠近感をうまく掴むことのできない世界では、それが大きいのか、近くにあるのかの感覚は不確かなものとなる。

 

 体液の中に浮かぶ器官、環境光を反射する有機的な壁。こうした感覚は展示室においても実現されている。VRは解像度の荒いLEDディスプレイで中継され、アルミニウムの椅子は蛍光灯の有色光を反射する。空中をたゆたうように造形された有機的な彫刻が、骨のようなアームによって壁や天井から吊られている。医療用のシリコンによって成形されたそれらの彫刻は、気温と紫外線に反応し色――光波が表面に反射する、その在りようを変える。こうした色彩が展示室を出た後に見る空のグラデーションに似ていることは決して偶然ではない。

 

 VR空間、展示室。そしてそれらを作り出すイッタ ヨダの分娩室=制作論に足を踏みいれよう。反復してあらわれる有機的な形態は、全てふたりの協働の始点となったデジタル彫刻に操作を加えたものだ。例えばVR空間において、それは風景や環境の大きさに拡大されている。アルミニウムの椅子は、この形態と型と原型の関係を持っている。またシリコン彫刻の造形はデジタル彫刻を展示するために作られたホルダーであり、デザイナーが制作したアームによって、本体のない状態で展示されている。ひとつの彫刻は、拡大、型取り、複製、機能的な解釈を通して、生物が子孫を残すように、個という輪郭を超えて展開していく。

 

 こうした方法は、地理的、社会的、民族的に異なる文化が急激に混じり合う現代の多文化社会を背景に、自分という個体を超えて彫刻を制作するために生み出されたものだという。そして彼らが現代的なメディアやテクノロジーを使いながらも、自分の実存を内向的に掘り下げ、精神性をまとった彫刻を作り上げるという表現主義的な側面を持つことを強調しよう*1。人間の内面の表出、それを他者と共有するという彼らの美学は、内側にあるものがむき出しになるという空間的な操作、それを作り出す制作論においても見ることができる。

 

 しかしここに一抹の不安を書きつけておきたい。異なる背景を持つ異なるふたりの内的な感覚から作られた彫刻を、演算によってひとつに融合するという強引な操作が必要とされる現実こそが、他者理解が決定的に不可能な現代社会の臨界点をアイロニカルに示しているといえないだろうか。彼らの方法が多文化社会が抱える様々な軋轢に対する本質的な救済ではないことに彼ら自身も気づいているだろう*2。だからこそこの出口のないうっすらとした不安は、彼らの造形にいっそうメランコリックな美しさを与えている。

 

*1彼らは彫刻家オーギュスト・ロダンやその弟子でもあったコンスタンティン・ブランクーシの作品を「内的な彫刻」と呼び、自身の実践をその延長線上に位置付けている。ここで彫刻と台の関係を扱ったブランクーシの名前を挙げていることは、デジタル彫刻のホルダーとしての有機的な形態をアームによって固定し展示するという異様な主従(逆転)関係について考える上でも参照項になるだろう。

 

 

*2ヨダは社会的なアイデンティティーについて尋ねた筆者のメールに対して、以下のように返信した。「ロンドンに何年も住んでいても、そこまで意識することはなかったように思います。あまり意識し始めると、自分の個としての生存というか、アイデンティティーの崩壊とまではいかなくても、危機にさらされる危険性があるからなのかもしれません。例えば、自分のアイデンティティーの両義性に対応するために、精神分析療法セラピーに20年通ったという有名なアーティストの話も聞いたことがあります。つまり専門家に頼らずに、自分だけの力でアイデンティの両義性や矛盾に対応するのは、かなりの致命傷を伴うというか、ひとりの人間にとっては難しいところがあるのかもしれません」